続→
グリンピースのポタージュを作っていたある日の夜。
全部ミキサーにかけて裏漉せば、より簡単に仕上がり、美味しくはなるとわかってはいます。ただ、イメージする仕上がりを目指すには、薄皮に含まれるわずかな雑味がどうしても邪魔になりそうでした。
どちらの工程を選択しても、見た目はグリンピース色した液体。味覚は千差万別ですから薄皮を剥いたところで、結果 自己満足という徒労に終わることだって多々あります。それでも、誰かに旨いと感じていただけて、結果良い時間を過ごせるかもしれないのなら、“薄皮剥く”の一択です。
とはいえ、一粒ずつ剥くのは時間がかかる。なかなか減らないグリンピースを前にして、「魔法が使えたらいいのに」とか「罰ゲームなのか?」とまるで呪詛のようにブツクサ言いながら1人皮剥く丑三つ刻。もしかしたら、心ではなく怨念を込めてたのかもしれません。

そうして仕上がったとはつゆ知らず、ポタージュを召し上がったお客様の1人から
『これ、美味しいです。私グリンピース嫌いなのに…これは飲めました。』
そう伝えてくださったときの、ゾワゾワする感覚ってどう言葉で表現したものか…嬉しいような、泣きたくなるような、報われたような、安堵するような…
探すことも忘れていた 何かかけがえのないものを見つけた時って、こんな感覚なのかな?例えばめちゃめちゃ感動する本に出会ったときのような?う~ん…わからん。
ただ、言葉に変えるとしたら「有り難うね」しか見つかりません。というのも、作り手がいくら心を込めたところで、伝わる受け手の方がいないと、成り立たないことですし、美味しいの半分は、受け手の方の感性のお陰だと思ってますから。
→続
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