気怠そうでいて、どこか鼻歌を歌ってるみたいなドラムが流れてくる。くだらない事で喧嘩した後、仲直りしたくて最初にかける言葉のように、柔らかい手触りのギターが そっと混じり合う。
『真夜中が今 その目を覚ます』
独特の高い声色で、そんな言葉から歌い出すその曲は、スウィートソウル。
8月、暑すぎて夏バテたのか、鉛を背負ったみたいに身体が動かず、夜と朝の境目位の時間に帰ることが多かった。自身の出来なさに“情けねーな”とイライラしながら、いつもの海沿いを車で走る。とはいえ、ささくれ立っていてもしょうがないと、気分転換によく聴き流していた曲だ。
歌詞を聴いてしまえば、感情が持っていかれるので、わざとその意味は考えないように。ドラム/ギター/鍵盤/ベース/声 などすべてを楽器と思い、脳内で別々にしてから聴く。
その曲にプカプカ浮かぶように、しばらく聴いていると、『そういえば明日は、あの人達がまた来てくれるんだっけなぁ』なんてことを思える余白が生まれてくる。そうなると、不思議なことに視界は少しずつ広がっていく。
見上げれば、夜の終わりと朝の始まりが曖昧に混じり合う、マジックアワーな空を見せてくれる帰り道。
こんな時間に ほとんど人はいないと思っていたのに、新聞配達や、きっとどこかで夜勤中の今仕事をしている人もいたり、今から仕事に向かう人もいれば、僕のように今仕事を終えて帰る人もいるよなぁと、ぼーっと見えてくる。
“いってらっしゃい”
“ご苦労様でした”
なんて 全く知らない人達に、車の中から何となくそう思えたりして。
誰の役にも立たないし、たぶん誰も嫌な気持ちにさせない、夏曲にまつわる どうでもいいような思い出。
朝晩と 少し涼しさを感じる。
四季の中で、自身が1番住み心地の良い季節がもうすぐそこまで。
店主
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